初期宇宙で生まれた天体を探る

宇宙の誕生直後に生まれた天体を探そうという試みは 様々な形で行われています。もちろん、遠くの宇宙を観測することによって 直接的にそのような初期宇宙天体を見つけることはできますが、 その詳細を調べるためにはやはり「生き残っている」天体を 私たちの身近で見つけ研究することが重要です。 どうやってこのような「初代の星・銀河」を探していけばよいかを 見ていきましょう。

低金属量星を探す

誕生時の宇宙には水素とヘリウム、そしてわずかなリチウムがあり、 これらが混合したガスから星が生まれます。 生まれた星は核融合で炭素や酸素といった重い元素を作りながら輝き、 最期には爆発して重元素を周囲にまき散らします。 次の世代の星は少し重元素が増えたガスから生まれ、これを繰り返して 徐々に重元素量が増えた星が生まれてくるわけです。

ということは、重元素の少ない星(低金属量星)を探していけば 初代の星に迫っていくことができます。このような考えに基づいて、 すばる望遠鏡に設置されている 超広視野焦点カメラ HSC に金属量を測定できる特殊なフィルターを取り付けて低金属量星を 探すサーベイ観測が共同研究として進行中です。

低金属量ガス雲を探す

宇宙の誕生直後の状態を保存するガス雲を探すというのも 初期宇宙に迫る別のアプローチです。 近傍宇宙の中でも孤立した環境であればそのようなガス雲が 見つかるかもしれません。

私たちの住む銀河系が所属している局所銀河群の中にも 孤立した環境にいる矮小不規則銀河というものがいます。 これらの銀河の周辺にとても淡いガス雲が見つかっています。 そのようなガス雲が宇宙誕生直後の状態の始原的ガス雲であるか はまだ分かりませんが、その観測研究には注目が集まっています。

今後の展開

このような研究を進めるにあたっては、すばる望遠鏡などを使い、 光学赤外線による観測研究を中心にしてきましたが、 別の波長帯の観測データを使った研究などにも 展開していくことができます。 新しいアイデアを持ってこのようなテーマに取り組んでいくことも たいへん重要です。

実際の研究

この分野の研究でも、すばる望遠鏡などで撮られたデータを処理すること から研究が始まります。 そのため、コンピューターを使った解析やプログラミングを中心にして 研究を進めることになります。