時間変動する天体の観測

一般に天体現象のタイムスケールは長いのですが、近年になり速く変動する (明るさが変動する、位置が変動する)天体がクローズアップされるようになってきました。 例えば、超新星・変光星など日の変動スケールの天体から、秒という変動スケールの ガンマ線バーストなどまで様々で、さらに速い変動をとらえたいという要請も 出てきています。

このような状況下、高速で読み出し可能なCMOSセンサーを使った観測装置が 製作されるようになってきました。 広い視野を高速撮像することができる東京大学木曽観測所のトモエゴゼンカメラや 高速分光観測まで可能なせいめい望遠鏡のTriCCSなどの 観測装置が製作され、ユニークな観測が行われています。

国立天文台のCMOSセンサー開発

国立天文台は浜松ホトニクスと共同で、新しいCMOSセンサーを 開発しています。その特長としては、大型のセンサー(大面積)であること、 3辺近接配置が可能であること、などが挙げられます。 この特長によって、センサー間の隙間を最小限にして焦点面にセンサーを 「敷き詰める」ことが可能になり、特にすばる望遠鏡の主焦点に設置した場合に 一番力を発揮するようなものとなっています。

CMOSカメラの開発

私たちの研究室では、すばる望遠鏡主焦点にこのCMOSセンサーを 搭載して観測することを目指し、国立天文台と共同で CMOSセンサーを12枚並べたCMOSカメラの開発を行っています。

このカメラが完成すると、「すばる望遠鏡の集光力」 「すばる望遠鏡主焦点の広視野」「CMOSセンサーによる高速撮像」 という3つの抜きん出た能力を同時に持つことができます。 例えば、同じ読み出し速度で比較すると、トモエゴゼンカメラに比べて 約40倍暗い天体までとらえることができるようになります。 天文学の世界では10倍性能がよくなると、 見えてくるものがガラリと変わってきます。

つまり、CMOSカメラが完成し、すばる望遠鏡に取り付けて観測することにより 今まで見ることができなかった天体・天文現象を探ることが可能になってくるのです。 そういった「新たな世界を見る」ことができるのがこのCMOSカメラなのです。

研究開発の具体例

CMOSカメラをすばる望遠鏡に取り付けて観測ができるように仕上げるのは なかなか大変な仕事なので、みんなで分担して開発を行っていきます。 また、開発を進めるうえで必要となる、光学・物性・熱・電気・コンピューターなどの 様々な知識・技術を勉強しながら開発を進めていくことになります。 具体的な開発の例を以下にあげておきます。

  • CMOSセンサーの性能評価
  • CMOSセンサーの冷却・読み出しシステムの構築
  • 読み出し回路の熱耐性と排熱最適化
  • 観測システムの設計と実装
  • データ処理システムの設計と実装

観測までの道筋

CMOSカメラは大きなプロジェクトなので、実際に観測が開始されるまでには 数年以上の時間がかかります。 皆さんの力を集結することによって、よい成果を生み出せるカメラを作りたいと思っています。